とあるハンターの外部記憶

かりびと見習い。釣り人的な。

耐突刺?肘カバーと耐切創肘保護カバー(2018年9月)

なかなかシュールな絵柄から始まりますが、なぜかこの製品コンセプトに「ときめく」ものがあったので・・・。

以前、イノシシ、熊対策の話の中で腕等の保護をどうするかなどを想像してみたネタをダラダラと書きましたが、考えるだけではつまらないので実際に防突き刺し、防切創腕カバーを2種類ほど買ってみましたので、またダラダラと書きます。

特に何か購入をお勧めするという感じではなく、ああ、こんなのがあるのね、という程度に読んでください。

こういうのは買って触ってみないとなんとも言えないので、とりあえず買ってみた感じです。

1つめは、上海圣甲安全防护科技有限公司(SENJIA)というところの製品のうち、肘を保護する商品。こちらはマイナーメーカであり未知数で、限定的な耐突き刺し機能もあるという感じ。最初にある画像の赤丸部分です。

手首から上、肘あたりまで保護する感じの製品。
他にも首、上腕部と肩、肘から先の腕、太もも、膝、ふくらはぎを保護するラインナップがあるようです。


SENJIAのヒジ保護カバー。

2つめは、DELTA PLUSというフランス系だというメーカの耐切創腕カバー。一応、EN388:2003という欧州基準の検査を通過しているようです。

こちらは耐突き刺し機能はありません。
普通の布より刃物で切れにくい素材と布を使っていて、刃物で勢い余って腕を切るとか、不用意に鋭利なものに腕が触れて切れるとかそういうのを多少軽減できる商品。
この手の繊維ではケブラー等が有名ですが、これは別の繊維を使っている模様です。
手のひらから肘の少し上くらいまで保護する商品。

DELTA PLUSの労働安全関連製品自体は中国のネット上ではよく見かけます。

また、過去に中国で使うための中国で急いで手に入れる必要があって、現地でヘルメットや革手袋等は中国で実際に買って使ったことがあるので、だいたいどんな品質かわかってて買いました。

中国で買う場合/使う場合に限定しますが、お値段程々でまあ問題なく使えるという感じの製品を出しています。
ちなみに日本に住んでいるなら、ヘルメットとかは普通に日本の労働安全衛生法の基準を通っている製品を買った方が安心安全確実です。

以下、今回の購入商品について詳細にダラダラと特徴を羅列していきます。
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さて、まず、1つめのSENJIAの耐切創・耐突き刺し肘カバー(黒色の商品の方)について。

今回購入したのは肘部分の保護をする製品で、一応、手首の上から肘まで保護できる感じではありますが、あくまでもメインは肘。
マジックテープで止めるので多少のサイズの幅も調整できます。

販売サイトではコメント欄に「腕が太い人や細い人などに合わせて オーダーメイドできる」旨も書いてありました。

購入理由は安いのでお試しということと、一応、中国の特許は持っているらしいためというのもあります。
こういう製品は数多あるけど、用途がかなり特殊な上に、欧米の特許を持ってる製品は高いのが多くて「ちょっと買ってみる」という感じにはならないので・・・。
2か所の縞々の部分はマジックテープです。
これで肘を中心に巻く感じで取り付けます。
夏だと暑いと思います。

構造上、腕の内側の保護はあまりされておらず、外側の保護が中心です。
腕の保護には腕の保護用の方を買った方がいいかもしれません。
ベストタイプなんかもありました

このSENJIAの製品は、一応、中国公安部(日本では公安省と訳されてます)の警察用耐突刺服の基準(公安部GA68-2008「警用防刺服」基準。24Jのエネルギーで貫通しないこと)も通ってるっぽいです。

ちなみに24Jがどのくらいかはわかりませんが、そもそも人間が人間を突き刺す想定なので、ツキノワグマの打撃をもろに食らった場合の切り傷とかは無理かなと思います(爪による切り傷での被害が少し軽減されるかもくらい?)。

他に何より打撃の力による頭蓋骨複雑骨折とかがあるので、ツキノワグマ相手なら、たぶんこの3倍くらい(適当)の想定が必要な感じもします。
さらにヒグマ想定だとそもそも打撃力で首や腕が取れそうなので、たぶん何の役にも立たないと思います。

この製品が、どういう理論で作られている製品なのかは特許の概要に書いてありました。https://patents.google.com/?assignee=%E4%B8%8A%E6%B5%B7%E5%9C%A3%E7%94%B2%E5%AE%89%E5%85%A8%E9%98%B2%E6%8A%A4%E7%A7%91%E6%8A%80%E6%9C%89%E9%99%90%E5%85%AC%E5%8F%B8
にズラッと書いてあります。

上記のうち、中国語の部分しかよくわからないので中国語だけ読んでみると、だいたい以下のような説明が書いてありました。

「基礎になる布素材に描いたパターン上に、一種の柔軟性がある耐突刺素材を0.3mm~2mmの厚さ、直径1mm~20mmのサイズで、隣接するパターンとの距離は0.2mm~2mmの間隔で接着成型し加熱して硬化する方法で製造している」

とのこと。
平たく言うと、コイン状に成型した樹脂が布の上に接着して並べてあるということかと思います。

この樹脂を固めた機械的強度が高いパーツが布素材の上に並んでいることにより、柔軟性があるのに耐突刺性能もあるとしています。
また、布上に成形された耐突刺素材同士の間には一定の隙間があり、これにより通気性と柔軟性を確保しているとのこと。

実際、触ってみると、布の内部に1円玉の半分くらいの大きさの円形の硬貨状の硬い物が並んで入ってる感じがわかります。

私も3Dプリンタ等で作った多数の小型の樹脂板をヒモでつないだら鎖帷子っぽくなるかなと考えたことがありますが、似たようなことを素でやってみたという感じの製品。
3Dプリンタでなくても、プラのコインとかプラ板とかを切って穴を開けて紐で繋いでみてもいいんですが)。

この腕カバー表面の布部分は「OK面料」なるそれなりに丈夫そうな謎の布を使っています。膝サポーターなどに使われているマジックテープがくっ付く厚手の布という感じ。
たぶん、この表面素材は防刃性能は無いような感じがします。柔軟な素材で快適性を保つための部分というか。
あくまでも防刃を保つのは中にあるという樹脂の硬さによる部分なのかなと思います。

SENJIAという会社については、中国のネットで検索してみると、一応、中国の新聞でも紹介されている記事を見つけました。

「沪大学生打造"软猬甲" 百元一件防刺服达美国一级标准」
http://sh.eastday.com/m/20151026/u1a9076913.html
http://web.archive.org/web/20180822041536/http://sh.eastday.com/m/20151026/u1a9076913.html

この記事によると、この上海圣甲(SENJIA)という企業は2013年に上海にある東華大学の大学生が作った会社だそうで、製品コンセプトとしては

アメリカなど海外の耐突刺し服は価格も高くて、硬い金属板が入ってたり等で動きが制限されたり、重かったりしたので、軽くて動きやすいのを作ったらどうだろう」

という感じで製品化してみたという感じのようです。

ちなみに、記事の中国語にある「软猬甲」(ルアンウェイジャー)というのは、中国の武侠小説という武術に優れ義理を重んじる英雄的な主人公を題材にした小説に出てくる防具だそうで、金糸と千年籐枝(樹齢千年を経たトウの枝?)で作られた刃物を簡単に通さない軽い甲冑という感じのようです(たぶん)。
漢字の意味の直訳だと「柔らかいハリネズミの鎧」みたいな感じでしょうか。

確かにお値段はリーズナブルで、日本円で部位ごとに1千円~2千円くらい。
実際に軽いです。
今回購入してみた肘を保護する商品については、実測で245gでした。

動きやすさは鉄板が入ってるものよりは動きやすいと思いますが、肘サポーターみたいな感じなので、やはりある程度制限はされます。

買ってみて触ってみて調べてみて思ったのは、この製品の弱点としては、特許の概要通りなら、装甲として布内部に入っている樹脂片と樹脂片の間に0.2mm~2mmの隙間があると言うことかなと思います。

この隙間に、鋭利な先端の刃物がくると、樹脂パーツによる防御ができないわけで、刺さり方や場所によっては防げないのではないかなと。
"当たりどころがよくて樹脂片の上に刃物や動物の爪がくれば"防げるかもという感じ。

切りつける動作に関しては樹脂片が入っていない他の耐切創腕カバーよりは刃物を防げる感じはします(内部に硬い物が入っているわけですから)。

腕への固定に関しては、写真の縞模様に見える部分がマジックテープになっているので、腕の太さに合わせてしっかり止められるようになっています。

SENJIAの腕保護カバーのtaobao上の商品リンクは以下。
https://item.taobao.com/item.htm?spm=a1z09.2.0.0.616e2e8d2EdKY3&id=45829569518
メーカのオフィシャル販売ページが多いTmallの方ではないですが、たぶん、雰囲気からこの店舗はメーカーのオフィシャル販売ではないかと推定。

SENJIAの製品について、ちょっとマイナスな話が多くなりましたが、コンセプトとしては良いところも突いていて、よくあるゴツい防刃ベストなどと違ってスーツや服の下に付けても目立ちにくいというのも売りのようです。

確かに少しサイズに余裕があるスーツならこれを付けても、ぱっと見で防具を付けているという風にはわからないと思います。

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次に2つ目のDELTA PLUSの腕カバー(灰色の方)について。
耐切削保護の商品で、商品名はtaobao上で「代尔塔 202013 防割手套 防割护臂」で検索できます。
こちらは、片腕分で重さが実測76g。

taobaoの詳細な説明ページなどでは、製品型番は「VENICUT5M(2.02.013)」となっていました。

サイズはワンサイズですが、長さ45cmで手と親指を通すような感じになっていて、成人男性向けサイズかと思います。当方ではピッタリでした。

写真だと見た目は靴下かなんかみたいですが、ゴワゴワして伸縮性がある丈夫そうな布です。少し固めの布ですがそれほど動きが制限される感じではなく、普通に動かせます。

このタイプの耐刃物用の業務用向け腕カバーは日本でも売っています。
この製品は厚手ですが、他社製ではもっと薄手のものもあり刃物やガラス等を扱う業態で使用してる感じのようです。
写真右側の穴は親指を通す部分。

DELTA PLUSの腕カバーの素材は「VENITEX」、「TAEKI」という名前の目が細かい少し固めかつ厚手の合成繊維の布を使っている感じです。

動物からの爪からの保護には使えるか微妙(爪は刺さると思うが、なで斬りのような皮膚を裂くような攻撃からは防げそう)ですが、この製品に限らず耐切創腕カバー自体は、動物の解体時に刃物の扱いに慣れてない人につけさせると、勢い余って腕を切りつけて大怪我せずに済みそう。

実際、過去に動物の解体をするイベントに参加したことがありますが、慣れないナイフで、勢い余って手の親指の付け根付近を思いっきり切って出血してる人がいましたので、防刃手袋を合わせて使うといいかもしれません。

ちなみに、この手の製品のコメント欄を見ると猫などひっかく可能性がある小型動物を飼ってる人には好評な感じでした(爪でケガしなくなったとか)。
熊(ツキノワグマであり、not ヒグマ、ダメ、絶対)さんやイノシシさん相手だと、無いよりはマシという感じでしょうか。

以下の規格云々は別にして、普通に厚手な感じで刃物のような道具による切り付けはある程度防げそうな感じです。

また、欧州基準の「EN420:2003・A1・2009」で5(手袋の作業性?)、「EN388:2003 手袋に求められる機械的な要件」で454X(磨耗抵抗4、切断抵抗5、引き裂き抵抗4、突き刺し抵抗:未試験?)、「EN407:2004」でX1XXX(熱に接触した場合の等級1~4段階の1。)をクリアしてると標ぼうしています。
何れも数字が大きい方が高性能となっています。

対刃物での性能に重要と思われるEN388:2003規格については以下のサイトが参考になりました。

手袋に求められる安全性について
http://www.falconf16.jp/techno_folder/techno.html

耐切創保護具
http://image.orange-book.com/orange_pdf/2016-3-0174.pdf


というわけで、2つの商品を紹介しました。

それぞれの商品だと機能が不足する部分がありますが、2つを重ねてみるとこんな感じに
重ねて使うと、それぞれの弱点を補って使える「かも」しれません(そもそも耐人間用や人間が作業で使用する刃物の切り付けを想定してると思うので、強力な力を持つ野生動物には使えない率90%くらいの気が・・・10%は何かというと、素手や薄い布の服よりは絶対丈夫ですから、運が良ければ爪によって腕の肉が裂けるとかは防げるかもという感じの適当な数字です)。


少なくとも2つめの腕カバーの方は刃物を使う解体とかの時は、腕の内側や手首も保護できるのでつけておいて損はない感じはします(この商品形状だと、獲物の血で血だらけになりますけど、他社では手首までの商品もあります)。

実際に使ってみることがあれば、感想等を追記するかもしれません。

 余談ですが、ちなみに、この手の防刃、防切創、防突き刺し製品を調べていて見つけた中にはいろいろと種類がありまして、腕に巻く布製の素材の中に一定間隔で薄いステンレス等の金属板が入ってるものもありました。用途しては板ガラスを扱う作業員向けの製品っぽいです。 これは、さすがに本州レベルの動物だとステンレス板を貫通できる爪や牙を持つ動物はいないと思いますが、動きを大幅に制限されるのであまり意味がない気がしました。
面白いものでは、西洋の鎧の手甲のレプリカ(たぶん鉄かステンレス製) とかもありました。
 他には野生の蛇に足を噛まれても牙が貫通しない牛革を重ねてワイヤーか金属メッシュも入った足と靴に重ねてつけるゲイターみたいなものや 、犬の訓練用の分厚い牛革手袋とかもあり興味深かったです。
金属メッシュが織り込んである腕カバーとかもありますが、動きにくそうだったのと、いずれも公的な認証等を取ってないものが多かったので候補から外しました。